Vol.21 五風十雨 クマガイモリカズ

「蟻は左の2番目の足から歩き出す」これは、晩年の画家 熊谷守一が地面に頬杖をつきながら蟻の歩き方を幾年も見て発見したことです。

二十代から熊谷守一を仙人のように崇めていた私は、これを知った頃に、毎日蟻を見ていましたが未だに守一の域に達せずわかりません。

もう終わってしまいましたが、先月まで東京国立近代美術館で「熊谷守一 生きるよろこび」と題した没後40年の展覧会が開かれていました。また、2月には記念番組もテレビ放映されていました。そして今年5月、いよいよ山﨑 努 主演の映画「モリのいる場所」が公開されます。

熊谷守一の絵画は、幼子が描いたような線と色で簡潔に表現されています。自らが持ち運びやすいように小振りの板に描いた作品は小宇宙を思わせるスケールです。また、書は、途中で間違えたら訂正して続きを書いた作品もあるように、決して上手く書こうとしたものではなく素朴な味わいがあります。私の好きな書家の榊莫山さえも守一の域には達することが敵わないと言ったほどです。

良く芸術には作者の人柄が表れると言いますが、作品一点一点に守一の尊敬できる生き様と人格のすべてが表れていて本当にすごいって思います。

東京美術学校を首席で卒業した熊谷ですが、同僚に「海の幸」の作者で有名な青木繁がいます。箱根芦ノ湖をバックにうちわを持った和服姿の女性を描いた名画「湖畔」の作者でもある黒田清輝の授業でさえボイコットするほどプライドが高かった青木繁でしたが、同僚の中でただ一人一目おいていたのが熊谷守一でした。

息詰まって思い悩んだときに傍らにある一点の守一作品が、何を小さなことにクヨクヨしているんだって語りかけてきます。この機会に岐阜県中津川市の「熊谷守一つけち記念館」や東京の「豊島区立熊谷守一美術館」を訪れてみてはいかがでしょうか。

春うららかな季節、ぷらりとギャラリーへお立ち寄り下さい。守一作品も展示してお待ちしております。

「写真は熊谷守一の書、五風十雨です。『五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降る。ただそれだけのことです。』と守一は言っています。」

青山・里ギャラリー

アンティークオルゴールを聴きながら居心地の良い時間を♡

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